メール、FAX 等に係る印紙税の取り扱い
経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答
税理士 山 端 美 德
コロナ禍の影響により、当社では在宅勤務が導入されており、取引先との打ち合わせは電話、メール等によって対応しています。契約行為においても対面で文書を交わすのではなく、メールやFAX によるやり取りや、電子契約で行おうと考えていますが、印紙税の取り扱いはどうなりますか。
例えば、請負工事の注文請書を相手方に交付した時には、印紙税の課税文書に該当しますが、現物の交付に替えてメールで送信した時は、課税文書を作成したことにはならず、送信後、相手方においてプリントアウトしても、それは現物ではないため、印紙税の課税文書とはなりません。
それでは、自分の所で所持している注文請書には収入印紙を貼らなくてはいけない
のですか。
注文請書のような相手方に交付する目的で作成する課税文書は、交付の時に印紙税の課税原因が発生します。したがって現物が交付されていないのですから、収入印紙の貼付は必要ありませんよ。ただし、メール送信後に現物を相手方に交付した場合に、その現物には収入印紙の貼付が必要となります。
FAX で送った場合も同じ考えですか。
FAX の場合もメールの場合と同様に、送信された文書は現物ではないため、印紙税の課税原因は発生せず、自分の所で保管されている現物も収入印紙の貼付は必要ありませんよ。
最近よく耳にするのですが、電子契約の場合はどうですか。
課税文書の作成とは、課税文書となる用紙等に課税事項を記載し、これを文書の目的に従って行使することをいうとされていますが、電子契約のようにPDF 等の電子媒体でやり取りを行う場合は、課税文書となる用紙等に課税事項を記載しているわけではないので、課税文書を作成したことには該当しません。
今後、契約書等の文書の作成が書面ではなく、電子媒体による契約形態が主流となることが考えられますね。
【筆者紹介】
著書に『文書類型でわかる印紙税の課否判断ガイドブック』(清文社)、『建設業・不動産業に係る印紙税の実務』(税務研究会)、『間違うと痛い‼印紙税の実務Q&A』(共著、大蔵財務協会)、『税制改正経過一覧ハンドブック』(共著、大蔵財務協会)等がある。