会報145号(2022.7)より掲載

メール、FAX 等に係る印紙税の取り扱い

経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答

税理士 山 端 美 德

税金QandA
リサ

 コロナ禍の影響により、当社では在宅勤務が導入されており、取引先との打ち合わせは電話、メール等によって対応しています。契約行為においても対面で文書を交わすのではなく、メールやFAX によるやり取りや、電子契約で行おうと考えていますが、印紙税の取り扱いはどうなりますか。

サキ先生

 例えば、請負工事の注文請書を相手方に交付した時には、印紙税の課税文書に該当しますが、現物の交付に替えてメールで送信した時は、課税文書を作成したことにはならず、送信後、相手方においてプリントアウトしても、それは現物ではないため、印紙税の課税文書とはなりません。

リサ

 それでは、自分の所で所持している注文請書には収入印紙を貼らなくてはいけない
のですか。

サキ先生

 注文請書のような相手方に交付する目的で作成する課税文書は、交付の時に印紙税の課税原因が発生します。したがって現物が交付されていないのですから、収入印紙の貼付は必要ありませんよ。ただし、メール送信後に現物を相手方に交付した場合に、その現物には収入印紙の貼付が必要となります。

リサ

FAX で送った場合も同じ考えですか。

サキ先生

 FAX の場合もメールの場合と同様に、送信された文書は現物ではないため、印紙税の課税原因は発生せず、自分の所で保管されている現物も収入印紙の貼付は必要ありませんよ。

リサ

 最近よく耳にするのですが、電子契約の場合はどうですか。

サキ先生

 課税文書の作成とは、課税文書となる用紙等に課税事項を記載し、これを文書の目的に従って行使することをいうとされていますが、電子契約のようにPDF 等の電子媒体でやり取りを行う場合は、課税文書となる用紙等に課税事項を記載しているわけではないので、課税文書を作成したことには該当しません。

リサ

 今後、契約書等の文書の作成が書面ではなく、電子媒体による契約形態が主流となることが考えられますね。

【筆者紹介】

山端 美德 (やまはた・よしのり)
国税庁長官官房事務管理課、東京国税局課税第二部調査部門、同消費税課などを経て、神奈川県相模原市で税理士登録。中小企業を中心に財務・税務サービスを行うとともに、法人会において印紙税等に関するセミナー講師を務める。
著書に『文書類型でわかる印紙税の課否判断ガイドブック』(清文社)、『建設業・不動産業に係る印紙税の実務』(税務研究会)、『間違うと痛い‼印紙税の実務Q&A』(共著、大蔵財務協会)、『税制改正経過一覧ハンドブック』(共著、大蔵財務協会)等がある。

女性活躍で少子化時代に立ち向かえ

日刊工業新聞社 岡 田 直 樹

 2022年4月1日から中小企業にも女性活躍推進への取り組みが義務づけられた。コロナ禍での婚姻率低下も影響し、少子化に拍車がかかりそうだ。人手不足の影響を受けやすい中小企業では、女性を戦力化できるかどうかが持続的な成長のカギを握る。
 改正女性活躍推進法の施行で常時雇用する労働者が101人以上300人以下の企業も義務化になった。企業は女性社員の活躍状況を把握し、課題を分析した上で、数値目標を伴った行動計画を策定する。計画の策定や見直しの際は都道府県労働局へ届け出が必要になる。
 行動計画は社員に周知するとともにホームページなどで公表する。また厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で自社の取り組みを紹介したり、同省の基準を満たした優良企業であれば達成度に応じて3段階の「えるぼし認定」を取得したりすることができる。義務を怠っても罰則はないが、積極的に取り組んでいる企業は女性や新卒の採用で好影響が期待できそうだ。
 男性社員の比率が高い製造業でも、女性社員の戦力化に成功している中小企業がある。半導体製造装置に使われるワイヤーハーネスの製造・販売を主力とする株式会社ササキ(山梨県韮崎市)は社員の半数を女性が占めており、女性管理職の割合も1割を超えて同業種平均(3.3%)を大きく上回る。製造部門でも女性が半数を占め、ねじ締め、圧着、ハンダ付けなどの重要工程を担っている。女性社員は地元の普通高校などから採用し、OJTや外部のセミナーを活用して技能の習得や向上に努めている。また緊急事態宣言下で小学校が休みになった時には、会社で子どもを預かり、社員が交代で面倒を見るなど女性が働きやすい組織風土を築いている。
 鳥獣捕獲器メーカーの有限会社栄工業(新潟県燕市)は、女性社員がスポット溶接や組み立て、検品など製造の担い手になっている。「仕事に取り組む姿勢が厳しい。主婦目線が生かされているのか、製品の仕上がりがきれいで、間違いがほとんどない」と山村則子社長は仕事ぶりに太鼓判を押す。
 女性活躍推進総研(東京都品川区)の石原亮子所長は「日本は人材不足ではなく、女性の能力を生かし切れていないところに問題がある。学歴や器用さ、共感力、傾聴力などいろいろな能力を有した女性がいる。その能力を先に引き出せた企業が勝ち残るだろう。中小企業はトップがその気になればやりやすい」と、慢性的な人材不足の時代では女性活躍が欠かせないと説く。
 女性が働きやすい企業は、誰にとっても働きやすい環境にある。そうした企業は就活生の好感度も高いはずだ。特に学生時代から国連の持続可能な開発目標(SDGs)を学び、「ジェンダー平等」などの人権を重要視する学生には魅力的に映るのではないか。女性が活躍できない企業は、若者から選ばれなくなる時代が来ると言っても言い過ぎではない。
 コロナとの共存は続き、水害や地震などの自然災害は多発する。中小企業によっては新規分野への進出や業態転換が生き残りを左右するかもしれない。先行き不透明な時代にあっては、なおのこと女性の視点や発想を活用したい。女性ならではの感性や生活者目線を生かした商品開発、丁寧で繊細な仕事ぶり。そうした多様性を生かし切れず、能力を眠らせていないだろうか。

【筆者紹介】

岡田 直樹 (おかだ・なおき)
1984 年、日刊工業新聞社入社。記者として、金融・電機・情報通信などの産業界、総務省・経済産業省・内閣府などの官庁を担当。論説委員、論説委員長、日刊工業産業研究所長を経て、特別論説委員。
もっと詳しい情報を知りたい方は→→→ 国税庁【タックスアンサー】 ←←←のサイトをご覧ください。
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