出物品販売場(いわゆる免税店)制度について

会報150号(2023.10)より掲載!

出物品販売場(いわゆる免税店)制度について

経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答

税理士 山 端 美 德

税金QandA
リサ

 最近、訪日外国人観光客の復調が話題を集めていますね。外国人観光客等に物品を販売した場合、消費税を免除して販売できると聞きましたが、誰でも消費税を免除して販売できるのですか?

サキ先生

 輸出物品販売場、いわゆる免税店を経営する事業者が、外国人観光客等に対して、免税対象物品を販売した場合に、消費税が免除されるということです。
 輸出物品販売場を経営するには、事前に税務署長に許可申請書を提出して許可を受ける必要があります。
 また、輸出物品販売場において免税販売を行うためには、免税販売手続きの際に、インターネット回線等により、国税庁長官に購入記録情報を電子的に送信するなどの対応が必要となります。

リサ

 免税販売の対象者は具体的にどのような方ですか?

サキ先生

 免税販売は、外国人旅行者等の非居住者が対象となります。外国人であっても、国内に居住している方は免税販売の対象とはなりません。具体的には、外国籍の方の場合、「短期滞在」、「外交」、「公用」の在留資格をもって在留する方や、寄港地上陸許可等により上陸許可を受けて在留する方、合衆国軍隊の構成員等が対象となります。
 また、日本国籍の方の場合は、国内以外の地域に引き続き2 年以上住所または居所を有することが、大使館・領事館の在留証明または戸籍の附票の写しによって確認された方が対象となります。

リサ

 免税で販売できる対象物品とはどのようなものですか?

サキ先生

 免税対象物品は、通常生活の用に供する物品です。したがって、金や白金の地金や事業用または販売用として購入されることが明らかな物品は、免税販売の対象とはなりません。
 また、免税対象物品によって金額基準が定められています。消耗品以外の家電、バッグ、衣類等の一般物品は販売価額の合計額が税抜き5,000 円以上、飲食料品、医薬品、化粧品等、その他の消耗品については、販売価額の合計額が税抜き5,000 円以上50 万円以下のものが対象となります。

リサ

 当社で扱っている品物も該当しそうですね。これからもっと需要が増えそうだから検討してみようかしら。

サキ先生

 消費税免税制度についての詳細な情報は、国税庁ホームページに掲載されています。また、消費税免税店相談窓口が運輸局と経済産業局の担当課にあるみたいですよ。

【筆者紹介】

山端 美德 (やまはた・よしのり)
 国税庁長官官房事務管理課、東京国税局課税第二部調査部門、同消費税課などを経て、神奈川県相模原市で税理士登録。中小企業を中心に財務・税務サービスを行うとともに、法人会等において印紙税等に関するセミナー講師を行う。著書に『文書類型でわかる印紙税の課否判断ガイドブック』(清文社)、『建設業・不動産業に係る印紙税の実務』(税務研究会)、『間違うと痛い‼印紙税の実務 Q&A』(大蔵財務協会)、『税制改正経過一覧ハンドブック』(共著、大蔵財務協会)等がある。

業態の把握(不動産賃貸業の場合)

実践税務調査

税理士 牧 野 義 博

税金QandA

 調査官は不動産賃貸業の実地調査を行うことになりました。数か所のアパートを所有していますが、未契約の部屋数が多く見受けられることから、過去3 期分の契約状況をトレースしてみることにしました。
 近隣のアパートの入居状況等も調査しましたが、満室とはいかなくても 80% 程度は埋まっています。当社のアパートは立地条件もさほど悪くなく、家賃も近隣の相場とそれほど変わりません。釈然としないので、調査官は代表者と面接して概況を聞いてみました。

調査官

 近隣のアパートと比べても家賃はそれほど変わりませんが、入居状況がかんばしくありません。何か原因でもあるのですか ?

代表者

 特にこれといった理由はありませんよ。どうぞ調べてください。

 統括官に復命をしたところ、給水契約状況の確認を取るために水道局に反面調査をするよう指示がありました。さっそく水道局に臨場して確認を行った結果、給水契約があるにもかかわらず空室であるかのように装っている事実が判明したため、調査官は再度会社に臨場して代表者に説明を求めています。

調査官

 賃貸収入は振込ですか、それとも現金の集金ですか ?

代表者

 振込だけど何か問題でもありましたか ?

調査官

 全件振込で間違いありませんね。(ここで代表者の顔色が変わりました。)おかしいですね。賃貸者全員が振込であるならば、それ以外の人はどのような家賃の支払い方をしているのでしょうか ?

代表者

 言っている意味が分かりません。(代表者の顔がこわばっています。)

調査官

 社長、水道局に行って給水状況を調べさせていただきました。ここまで言えばもうおわかりですよね ?

代表者

 ……。

調査官

 給水契約があるのに空室ということはありませんよね ?

代表者

 ……。

調査官

 現金集金に係る部分を除外していたのでしょう ?

代表者

 申し訳ない。現金ならアトがつかないから。

調査官

 現金収入はどうされましたか ?

調査官

 個人的に使ってしまいました。

調査官

 社長の預金関係を見せてください。

代表者

 預金通帳には入れていません。アトがつくからね。

調査官

 現金集金に係る賃貸借契約書を見せてください。これを見ると礼金収入も除外されていますね。

代表者

 申し訳ない。それで税金はどうなるのですか?

調査官

 収入除外による隠ぺい行為がありましたので重加算税の対象となります。さらに除外部分を個人的に費消していますので、社長に対する認定賞与として源泉所得税も課税されます。

代表者

 重加算税はいくらかかるのですか ?

調査官

 追徴税額の 35% が付加されます。これに懲りて不正計算は二度としないように。わかりましたね。

【筆者紹介】

牧野 義博 (まきの・よしひろ)
東京国税局調査部において特別国税調査官、統括国税調査官、調査開発課長等を経て八王子税務署長を最後に退官。東京都新宿区で税理士登録。著書には『ザ・税務調査 1 ~ 3』『税務トラブルと債務の確定』(大蔵財務協会)ほか専門誌等に執筆。HP は「牧野義博税理士事務所」で検索。全国各地で講演会も行っている。
もっと詳しい情報を知りたい方は→→→ 国税庁【タックスアンサー】 ←←←のサイトをご覧ください。
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