国外居住親族に係る扶養控除の取り扱い
経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答
税理士 互 井 敏 勝
国外に居住している親族(国外居住親族)を扶養控除の対象としている従業員から、扶養控除の制度が変わっているようだが問題ないか相談を受けたのですが、何か改正されましたか? この従業員は、フィリピンに居住している母親(65 歳)に、毎月生活費として3万円送金しています。
令和5 年1 月以後に支払われる給与等について、国外居住親族に係る扶養控除の対象となる親族から、年齢30 歳以上70 歳未満の者のうち、①留学により非居住者となった者、②障害者、③給与等の受給者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者のいずれにも該当しない者が除外されました。したがって、ご質問の場合、従業員の母親が留学により非居住者になった者か障害者でなければ、年間で38 万円以上の生活費又は教育費に充てるための送金が必要になるので、毎月3 万円の送金では年間36 万円となり、現状では扶養控除の適用を受けることはできません。
そうなのですね。扶養控除の適用を受けるためには送金額を増やす必要がありますね。なぜこのような改正が行われたのですか?
これは、年齢が30 歳から69 歳までである非居住者は所得の稼得能力があると考えられることから基本的には扶養控除の対象外としつつ、所得の稼得能力があると考えにくい学生や障害者は引き続き扶養控除の対象とできることとし、さらに、年間で受け取った送金額が38 万円以上である者についても、真に所得が低い可能性を否定できないことなどから、扶養控除の対象となることとされました。
この従業員の母親は留学により非居住者となった者や障害者には該当しないようですが、扶養控除の適用を受けるための手続きを教えてください。
給与等の支払者に給与所得者の扶養控除等申告書を提出する際に、国外居住親族が給与等の受給者の親族であることを証する書類を提出等する必要があります。さらに、年末調整の際には、その年中に支払った金額を記載した扶養控除等申告書を提出等するとともに、その年における支払金額の合計額が38 万円以上であることを明らかにする書類を提出等する必要があります。
扶養控除の対象に該当するか否かの判定は、いつの時点でどのように行うのでしょうか。
扶養控除の対象に該当するか否かは、扶養控除等申告書を提出する日の現況において見積もったその年中の支払金額で判定します。
見積金額で判定するのですか。実際の支払金額が38 万円未満となった場合はどうなりますか?
年末調整において、結果として、その年中の支払金額が38 万円未満となった場合には、その国外居住親族について扶養控除の適用を受けることはできないことになります。
なるほど。年末調整の際には、国外居住親族へのその年の送金の合計額が38 万円以上であることを確認し忘れないよう注意が必要ですね。