会報142号(2021.10)より掲載

在宅勤務に係る費用を会社で負担する場合の取り扱い

〜経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答〜

税理士 互 井 敏 勝

リサ

 新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として在宅勤務を進めていますが、使用するマスク等の消耗品の購入費用を従業員に支給した場合、給与として課税対象となりますか。

サキ先生

 勤務時に使用するマスクや消毒液など、在宅勤務のために通常必要な費用(消耗品等)を精算する方法により支給する一定の金銭については、給与として課税する必要はありません。

リサ

 在宅勤務に通常必要な費用を精算する方法とはどのようなものですか。

サキ先生

 精算する方法としては、会社が在宅勤務に通常必要な費用として仮払いした後、従業員が業務のために使用する消耗品等を購入し、その領収証等を会社に提出してその購入費用を精算(仮払金額が購入費用を超過する場合には、その超過部分を会社に返還)する方法や、従業員が業務のために使用する消耗品等を立て替え払いにより購入した後、その購入に係る領収証等を会社に提出してその費用を精算(購入費用を会社から受領)する方法が考えられます。

リサ

 パソコンなどの事務用品等を支給した場合も、給与として課税する必要はありませんか。

サキ先生

 会社が所有する事務用品等(パソコン等)を従業員に貸与する場合は、給与として課税する必要はありませんが、事務用品等を支給した場合(事務用品等の所有権が従業員に移転する場合)は、現物給与として課税する必要があります。この貸与には、例えば、従業員に専ら業務に使用する目的で事務用品等を支給という形で配付し、その配付を受けた事務用品等を従業員が自由に処分できず、業務に使用しなくなったときは返却する場合も、貸与とみて差し支えありません。

リサ

 従業員が負担した通信費について、在宅勤務に要した部分を支給する場合はどうなりますか。

サキ先生

 通話料は、通話明細から業務のために使用した金額が確認できるので、その金額を支給する場合は、給与として課税する必要はありません。また、基本使用料やインターネット接続に係る通信料は、業務のために使用した部分を合理的に計算する必要があります。なお、営業担当など業務のための通話等を頻繁に行う場合の通話料、基本使用料、インターネット接続に係る通信料は、簡便的な算式(従業員が負担した1 カ月の通信費×その従業員の1 カ月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2)等により算出したものを支給する場合は、給与として課税しなくて差し支えありません。

リサ

 感染が疑われる従業員に対してホテルなどで勤務することを認め、そのホテルの利用料や交通費を従業員に支給した場合はどうなりますか。

サキ先生

 職場以外の場所で勤務することを会社が認めている場合、その勤務に係る通常必要なホテルの利用料や交通費について、その費用を精算する方法または会社の旅費規定などに基づいて、従業員に対して支給する一定の金銭についても、給与として課税する必要はありません。

リサ

 なるほど。基本的には新型コロナウイルス感染症に関する感染予防対策として、業務のために通常必要な費用を負担する場合には給与として課税しなくていいのですね。

【筆者紹介】

互井 敏勝(たがい・としかつ)

1968 年生まれ。東京国税不服審判所審判部、同所管理課、国税庁長官官房会計課、東京国税局総務部税務相談室などを経て、東京都中央区で税理士登録。近著『令和3 年版 税制改正経過一覧ハンドブック』、『経営に活かす税務の数的基準』(共著、大蔵財務協会)、『所得税重要事例集』(共著、税務研究会)など。

現場確認調査 〜実践税務調査〜

税理士 牧 野 義 博

 調査官は一般土木建築業の法人を調査するため準備調査に入りました。
 法人税申告書の勘定科目内訳明細を検討していたところ、この法人は会社の近くに限らずあちこちに点在する従業員の寮を多数保有しており、いずれも代表者からの借り上げ物件であることが判明しました。
 明細地図で所在の確認を行ったところ、肩書地にはアパートらしき物件はありますが、会社の寮であるか判別できません。さらに詳しく見ていくと、ある寮の所在地が地図上では空白になっており更地のようなので、調査官は調査着手前に現場確認を行うことにしました。取りあえず、いくつかの寮を見て回ったところ、水道の蛇口がポツンとあるのみで建物の痕跡が無い物件が見つかったので、さっそく近隣に聞き込みを開始しました。

調査官

すみません、あそこの更地は前からあの状態でしたか。

代表者

ええ。以前は古いアパートがあったけど、3 年前に持ち主がマンションに建て替えようとしたらもめ事に巻き込まれ、結局取り壊したまま断念したらしいよ。

調査官

ありがとうございます。(これは架空の支払い家賃だな!)

 調査官が全件について現場確認を行うと、3 ヵ所が更地であったり従業員の寮として使われていなかったりすることが判明しました。念のため、最寄りの水道局に赴き、いつから水道が使われていないのか確認を行ったところ、近隣者の証言と内容がほぼ一致したことから、実地調査に着手。会社に臨場して、代表者から説明を求めることにしました。

調査官

社長、従業員がたくさんいますね。採用はどうしているのですか。

代表者

人がなかなか集まらないので、地方の学校と提携して毎年なんとか採用しています。

調査官

従業員の住まいはどうなっているのですか。

代表者

会社でアパートを借り上げ、寮として使っています。

調査官

寮がたくさんあるので家賃の支払いが大変でしょう。

代表者

私の土地があるので、そこに寮を建て安く会社に貸与しています。

調査官

従業員からの家賃はどうしていますか。寮を借りている従業員が多いので、経理処理の手間から考えると振り込みですか。

代表者

給料日に現金で集金しています。さっきから寮にこだわっているけれど、何か問題でもありますか。

調査官

従業員から集めた家賃は会社から社長に支払われますが、決済は振り込みですか、それとも現金ですか。

代表者

何でそんなこと聞くの。

調査官

寮を全部調べさせてもらいましたが、3 ヵ所が寮として使われていませんでした。もう、お分かりですね。

代表者

最初は全部寮だったのですが、最近の若い人はプライバシーにうるさく、自分でアパートを探して転居する人が増えたからですよ。

調査官

そうであれば、そのように処理をすれば良かったのに、会社から家賃をもらい続けましたよね。更地であるのに寮として会社から家賃を受け取るのはおかしいでしょう。その金は何に使いましたか。

代表者

人を集めるのに、いろいろと金がかかるのです。

調査官

それは経費となるのですから表勘定で支払えば済む話です。会社から集めた家賃はどうしましたか。現金のまま保管しているとも思えませんので、社長の預金を確認させていただきます。社長、銀行調査をすればわかる話です。説明をしてください。

 その後、個人資産について調査を続けた結果、社長名義の預金から引き出された金を高級外車の頭金にしていることが判明しました。代表者を説得したところ、不正に作った金で支払ったことを認めました。
 この行為は仮装および隠ぺいと認められますので、重加算税が賦課されるとともに、代表者への簿外給与であるとして源泉所得税の賦課決定がされました。

【筆者紹介】

牧野 義博(まきの・よしひろ)

東京国税局調査部において特別国税調査官、統括国税調査官、調査開発課長等を経て八王子税務署長を最後に退官。東京都新宿区で税理士登録。著書には『ザ・税務調査1 〜 3』『税務トラブルと債務の確定』(大蔵財務協会)ほか専門誌等に執筆。HP は「牧野義博税理士事務所」で検索。全国各地で講演会も行っている。




 
 


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