会報140号(2021.4)より掲載

企業版ふるさと納税とは ?

〜経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答〜

税理士 手 嶋 浩 明

リサ

 企業版ふるさと納税という制度があると聞きました。法人でも地方公共団体に寄附をすると、税額控除が受けられたり、個人版ふるさと納税のような返礼品があるのですか。

サキ先生

 企業版ふるさと納税は、個人版ふるさと納税の後を追って平成 28 年に創設された制度で、地方公共団体を応援するという点では個人版ふるさと納税と同じですが、税額控除の仕組みが異なり、返礼品もありません。

リサ

 企業版ふるさと納税は、どの程度税額控除が受けられますか。

サキ先生

 令和 2 年度の税制改正で、税額控除割合が引き上げられ、寄附金の最大約 9 割(改正前は約 6 割)が、法人関係税(法人税、法人住民税、法人事業税)から軽減され、法人の実質負担は、寄附金の約 1 割になります。仮に、 100 万円寄附すると、90 万円は法人関係税から軽減されるため、法人の実質負担は 10 万円ということになります。ただし、赤字決算の場合や、繰越欠損金があって所得金額が 0円になる場合など、税制上のメリットが受けられない場合もあるので注意が必要です。

リサ

 税制上のメリット以外に何かありますか。

サキ先生

 社会貢献に取り組む法人としての PR 効果やイメージアップが期待できます。地方公共団体は、企業版ふるさと納税の寄附について公表を希望しない法人を除き、法人名や寄附額を公表することになっています。また、地方公共団体の地方創生プロジェクトに対する寄附のため、寄附金の使い道が明確であり、寄附した法人がどのように社会貢献したのか分かりやすくなっています。

リサ

 企業版ふるさと納税は、どこの地方公共団体でも対象となるのですか。

サキ先生

 企業版ふるさと納税は、国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対する寄附が対象になります。対象は、内閣府地方創生推進事務局の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」で公表されており、「地域から探す」、「キーワードから探す」といった検索ができます。

リサ

 寄附はいくらからできますか。

サキ先生

 10 万円以上の寄附が対象ですが、青色申告法人による寄附が対象になります。

リサ

 税額控除を受けるにはどうすればよいですか。

サキ先生

 一般的な流れとして、@地方公共団体に寄附を申し出る、A送付された納入通知書で寄附額を払込む、B寄附金受領書が送付される、C確定申告書に明細書を添付し寄附金受領書を保存することになります。

【筆者紹介】

手嶋 浩明(てしま・ひろあき)

1972 年生まれ。東京国税不服審判所審判部、東京国税局査察部査察審理課、東京国税局管内の税務署において法人課税部門の審理担当として各法人会をサポート、などを経て、東京都中央区で税理士登録。互井敏勝税理士事務所に勤務。中小企業を中心に財務・税務サービスを行う。

福利厚生費(支度金、社宅等に対する取扱い)

〜実践税務調査〜

税理士 牧 野 義 博

 調査官は福利厚生費勘定の内容のうち、従業員等に対する経済的な利益の供与として給与に該当するものはないか検討を行っています。

調査官

支度金の支給がありますね。支払いの根拠を教えてください。

担当者

旅費規程がありますのでそれをご覧ください。

調査官

海外出張をされた方に支度金を支給されていますが、同一人物が年に数回、同一金額を支給されています。その内容を説明してください。

担当者

その都度定額を支給しており、精算はしておりません。

調査官

支度金とは、渡航に要するパスポートやビザ取得費用やスーツケース購入等の海外出張に最低限必要な費用で、実費精算した場合には福利厚生費として認められますが、次回の出張からは原則として発生しないものです。

担当者

それではどうなるのですか。

調査官

出張者に対し毎回定額で支給されている支度金は、経済的利益に該当しますので給与課税の対象になります。また、支度金の中には、転勤に伴う転居費が含まれていますが、その内訳を教えてください。

担当者

転居費とは、転勤した従業員が転居に際して支払った新たな賃貸借契約に伴う敷金、礼金、保証金、住居の仲介手数料を言います。また、転居に伴い従業員が各自で支払った子どもの転学に要した費用、すなわち、幼稚園から高校までの入園・入学料、施設費、制服代や指定教材費を、転学費として使用者が負担しています。

調査官

この転居費等は、いわば従業員等の家事費用に関するもので、法人からの補助の有無にかかわらず、従業員等が転勤先で生活するために自ら負担しなければならない支出です。従って、この転居費等は、転勤者という特定の者に対してだけ支出されたり、従業員各人によって支出の内容が異なる場合、実質的には従業員等に対する給与となります。

担当者

借上社宅の場合、転居費等を使用者が直接賃貸人に支出しているため、従業員等の給与として課税されないのに、従業員等が賃借人から直接住宅を賃借する場合には、転居費等を従業員等が支払い、その後、従業員等が使用者から支払分の支給を受けるため、給与所得となるのは納得できません。

調査官

借上社宅の場合、従業員等には居住先を選択する余地がなく、そこに住むことを強制されるものであるのに対して、転居費等の場合には、従業員等は自らの嗜好により自由に居住先を選択できます。そうすると、たとえ従業員等自身が契約する借家が社宅制度に代わるものであったとしても、借家の選定時に従業員等自身の恣意性が入る余地があるため、従業員等の選択によって転居費に相当する金額も大きく変動することになります。借上社宅の場合、転居費等を支出する主体が使用者側にあるのです。

担当者

わかりました。

調査官

ところで、借上社宅の契約の中に駐車場が入っていますが、駐車場は社宅には該当しないため従業員等の給与となりますので注意をしてください。

担当者

借上社宅と駐車場が込みで契約金額が策定されている場合はどうですか。

調査官

明確に区分ができないのであれば、給与に該当するとまでは言えないと思われます。

【筆者紹介】

牧野 義博(まきの・よしひろ)

東京国税局調査部において特別国税調査官、統括国税調査官、調査開発課長等を経て八王子税務署長を最後に退官。東京都新宿区で税理士登録。著書には「ザ・税務調査 1 〜 3」「税務トラブルと債務の確定」(大蔵財務協会)ほか専門誌等に執筆。HP は「牧野義博税理士事務所」で検索。全国各地で講演会も行っている。




 
 


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