会報143号(2022.1)より掲載

いよいよスタート! インボイス制度・準備編

経理課社員リサと顧問税理士サキ先生の税務問答

税理士 小 池 正 史

税金QandA
リサ

令和5年10月1日から消費税の制度が大きく変わるので準備が必要だと聞いたのですが、どのように変わるのですか。

サキ先生

さすがはリサさん、税制に関する情報に常にアンテナを張っていますね。これまでの消費税改正は主に税率の改正でしたが、今回の改正は「インボイス制度」といって、売手が買手に対して「インボイス(適格請求書)」を作成及び発行して正確な適用税率や消費税額等を伝え、買手はそれらを保存することを義務化するものです。

リサ

それは、具体的にどのような制度なのですか。

サキ先生

「インボイス制度」とは、売手が「インボイス」という記載事項の定められた請求書、納品及び領収書等を作成し、買手がそれらを保存しないと消費税の仕入税額控除が認められないというものです。その内容をしっかり把握していないと皆さんの事業に大きな影響が出てくるので少し勉強しましょう。

リサ

そうですね、消費税の仕入税額控除が認められなければ、税金の負担もかなり大きいものになってしまうので、先生しっかり教えてください。

サキ先生

令和元年10月1日に軽減税率が導入されたことにより、消費税の申告を行う上で売上や仕入に対応する消費税率を正確に計上するため、請求書、レシート及び領収書等の金額を消費税率が10%の部分と8%の部分に区分して記載する「区分記載請求書」の作成及び保存が必要となったことは記憶に新しいかと思います。今回はそれに代えて、令和5年10月1日以降は、「適格請求書発行事業者」に登録した事業者だけが発行できる「インボイス」を作成及び保存することが必要となりました。

リサ

「区分記載請求書」と今回の「インボイス」では記載内容などがどのように違ってくるのですか。

サキ先生

まず、「区分記載請求書」は発行先の氏名又は名称、取引年月日、金額などの取引内容と取引金額のうち税率が10%の取引と8%の取引を明確に区分し記載していれば仕入税額控除の証拠書類となりました。ところが、「インボイス」には、区分記載された現行の請求書に①登録番号、②適用税率、③税率ごとに区分した消費税額等の3つの記載事項を追加しなければなりません。また、売手は買手から求められた時には、「インボイス」を必ず交付し、写しを保存しなければならなく なりました。

リサ

ところで、「インボイス制度」で事前に準備しなければいけないこととは何ですか。

サキ先生

先ほどの請求書等の記載事項の追加に「①登録番号」とありますが、これがないと「インボイス」の発行ができないので、令和3年10月1日から令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者」の登録申請をして「登録番号」を取得しておく必要があります。登録申請はe-Taxソフトでもできるので、忘れずに行ってください。ただし、すべての「適格請求書発行事業者」は消費税の課税事業者となり、基準期間の課税売上が1,000万円以下になっても免税事業者にならないのでご注意ください。免税事業者の方は、今後消費税の申告が必要になるので、事前に税務署や税理士によく相談して「適格請求書発行事業者」に登録するか検討するといいですね。

【筆者紹介】

小池 正史 (こいけ・まさし)
1964年生まれ。東京国税局事務管理課、同法人課税課、統括国税実査官、酒類指導官勤務などを経て、横浜市中区で税理士登録。多業種にわたる企業の財務状況を見てきた経験を生かし、中小企業を中心に決算分析から経営の効率化、税務調査対策等のコンサルティングを行う。

相手に伝わる「伝え方」をしていますか

産業カウンセラー 柏 木 勇 一

◆顔が見えない上司からの指示、困惑する若手社員

新型コロナ感染者が減少、緊急事態宣言も解除されました。一方で新しく取り入れたテレワークを継続している企業も目立ちます。業種次第ですが、経費節減や、働き方改革の一環として、このスタイルが定着する可能性があります。
テレワーク継続を決めた製造業の総務部門で働くMさんから電話相談を受けました。声が低く、やや聞き取りにくい話し方でした。入社2年目、20代の若い社員でしたが、電話口の応対から、悩みの深さを読み取りました。
Mさんの業務は、全国の工場の生産計画と工程をまとめて工場に送ることが中心で、事務職なので在宅での業務も可能でした。会社全体の生産目標、過去の実績を把握していなければできません。新人だから分からない点は多く、相談相手もいません。上司からのメールや電話での指示は、社内用語(略語や独特の言い回し)、専門用語が多く戸惑っている、という訴えでした。上司からの指示が伝わらないので、仕事が停滞している状況と言えます。Mさんの努力も大事ですが、上司や先輩の態度に課題があることも浮き彫りになりました。

◆「相手に伝わる」ことを忘れないように

コミュニケーションの基本は、自分が「伝えた」ことではなく、相手に「伝わった」ことがすべてと言われています。「伝えたつもり」にならないで、相手の立場に立って、曖昧さをなくし、明確に言葉にすることを心がける必要があります。Mさんの上司の普段の言葉は、つきあいの長い部下や同僚には伝わっていると思いますが、経験の浅い部下、特に新人には、相手が分かってくれる言葉や用語で伝えることが望まれます。そこが欠けていたからMさんが相談してきたと言えるでしょう。
つけ加えれば、電話でも直接でも、話す時は相手の理解を確認しながら話すことが大事です。重要な情報は繰り返して伝えるようにしましょう。

◆職場での会話、置き換えてほしい事例を示します

①今日は何をやっていた? → 今日締め切りの○○はどこまでできている?
(テレワークの会話では多く聞かれる例です。ここは具体的に。)

②今回は少し多めに発注しておいて。 → 150個、発注してください。
(ちゃんと数量を伝えることでミスも防げます。)

③早く済ませてね。 → 今日の15時までにやってください。
(具体的な時間や時刻を指定することで相手も安心します。)

またテレワークでの会話で「こんな感じでまとめて」と言うだけではなく、自分のイメージに近い写真や図をオンラインで見せるのを心がけることで、分かりあえる関係につながります。「伝える・伝わる」コミュニケーションは、それぞれの職場で工夫してみてはいかがでしょう。ここでもコロナ禍から学ぶことがあります。

【筆者紹介】

柏木  勇一 (かしわぎ・ゆういち)
大学卒業後、新聞社勤務を経て、現在EAP企業でカウンセラーとして活動。
産業カウンセラー、家族相談士、交流分析士。
もっと詳しい情報を知りたい方は→→→ 国税庁【タックスアンサー】 ←←←のサイトをご覧ください。
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